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将来コンピュータや人工知能に自分や我が子の仕事が奪われると不安に思う方々への処方箋

チェスや将棋,囲碁で人工知能は人間の世界的プロフェッショナルを打ち負かしたニュースも飛び交う。経済紙では「○○年後になくなる仕事」「人工知能の脅威」みたいな記事が目につく。自分や我が子の将来が不安だ。そんな風に思う方も多いだろう。

私はその不安に対して,技術と教育の2つの角度から不安を解消する(かもしれない)話をしたいと思う。

まず技術面の話。コンピュータや人工知能に脅威を抱くのであれば,むしろコンピュータや人工知能などの技術を修得して活用する側に回るのが得策だ。「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ(アラン・ケイ)」という言葉もある。

こう言うと,一部では「プログラマは○○年後になくなる仕事」と書かれているので,懐疑的に思う人もいるかもしれない。とんでもない! この手の記事をよく読むと,「プログラマ」という言葉で人から指示された設計書の通りにコーディングをする作業者のことを指している。確かにそういう仕事もある。それならば滅びる方向に行くのは無理がないだろう。しかし,「プログラマ」を「顧客のビジネス課題を聞き,ITを主軸としたさまざまな技術的検討を行って,問題を解決するプロフェッショナル」と再定義したらどうだろう? そのような仕事は,部分的にはコンピュータや人工知能により自動化されるだろうが,全体としては今後当分の間は人間が創意工夫を凝らして主導権を握る領域だろう。自動化するためのソフトウェアを創る仕事も「プログラマ」の領域だ。

私たちの強み x 教育 研究室は,このようなスキルを持つ「多能工プログラマ」を育成している。学生の強みを見出し,実力を磨き上げることで,確実な就職実績を上げている。就職先としては,大手企業・人気企業にはこだわらない。むしろ,堅実な強みを持ち,生き生きと仕事ができる地元企業・中小企業を厳選してマッチングを図っている。そこで会社の外でも通用するスキルを磨き続ける。不確実な未来では,このような生き方のほうがむしろ安定するだろう。

そして私たちは「起業家マインド」の醸成も行っている。顧客のビジネスを理解するためには,ビジネスというものについて肌でわかる必要がある。そこで,企業や地域の課題をITで解決する経験を多く積むこと,それ以前に学生自身のビジョンとミッションを意識させることを行っている。その上で就職先を選択させている。だから就職先に対し深く満足する。

もう1つ,教育面の話。コンピュータや人工知能が発達した世の中では,単純作業から次々に自動化される。そういう時代では,知識を詰め込むだけ,偏差値重視の教育では未来がない。

最近話題になっている,大学入試制度改革,反転授業やアクティブ・ラーニングといった新しい教育スタイルの隆盛は,こうした危機意識が背景にある。これからは新しい時代にふさわしい教育を受けなければならない。

そこでまず,私は授業でアクティブ・ラーニングに積極的に取り組んでいる。狙うのは「受動的に教わる」姿勢から「主体的に学ぶ」姿勢に遷移させることだ。一度きちんと「主体的に学ぶ」スイッチが入ったその後は,通常の一方通行の講義スタイルに戻しても「主体的に学ぶ」ことができるようになる。社会に出た後は,必ずしも行き届いた教育ではないので,そんな環境でも「主体的に学ぶ」ことができるように訓練することを狙う。

強み x 教育 研究室ではさらに先を行く取り組みをしている。その名の通り,学生の個性から強みを見出し,将来を見据えて強みを伸ばしていくことで,学生の潜在能力を最大限に発揮させる。先ほど紹介した研究室の取り組みは,すべてこのような強み x 教育の延長線上にある。

学生が自分の強みに目覚めることができれば,あとは一定の時間をかければ熟練の域に達することが確実であろう。コンピュータや人工知能によるアプローチでは,このような熟練の域には容易に到達できない。しかも高度なプログラミング能力を有しているので,自らが熟練して得たスキルをコンピュータや人工知能に実装できる可能性もある。すなわち世界で勝負できる可能性があるということだ。

私からは未来はこのように見える。けっして安易に楽観できるわけではないが,道筋はここにある。

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