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セッション:s5b
テーマ:UI(User Interface)とUX(User eXperience)を向上する人間中心設計プロセス
講師:水本徹(島津製作所)
日時:2018/8/31 13:00~14:10
参加者:29人(終了時)
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<自己紹介と会社紹介>
島津製作所
・1875年創業
・分析計測機器や医用機器を製造・販売

自己紹介
・コナミ→シスメックス(博士号取得)→メディカロイド→人間中心設計推進機構
・スリルドライブ,全自動血液凝固測定装置などを作った

<ユーザーインタフェース(UI)>
・システムとユーザとの間のやりとりの仕組みをUIという

<組込ソフトウェア>
・どんどんUIがリッチになっている
メカの制御からスマホ並みのリッチなGUIを搭載することが求められるように
・アーキテクチャ
アーキテクチャとユーザとの間をUIという
・製品開発の課題
企画担当者と設計担当者が苦労している
企画→設計→評価→発売(→フォロー)
社内関係者がユーザの意見を聞き,企画担当者が決定する
設計担当者が要求や自分の使いたい技術が使えない
評価担当者はユーザの要求を意識して評価を行っているわけではない
→ユーザに対する共通認識が持てていない,各部門が個別で動いている
・V字モデル
UI上の問題が発覚するのは運用テスト時
→運用テスト時に問題が発覚すると損失が大きい
→要求テストの質が低いことが原因

<デザイン>
・プロダクトデザイン
筐体の形状,色などの外装
プロダクトデザイナーは、設計図面をインプットに見た目を整える
・GUIデザイン
画面のレイアウト,アイコンなどのグラフィック
GUIデザイナーは、ソフトウェアの仕様書をインプットに見た目を整える
・開発プロセスとデザインの関わり
企画書が曖昧であると設計仕様書も曖昧になり,ユーザの希望に合わなくなる
デザイナーが設計するUI:
機器やソフトウェア,システムなどと利用者の間で情報をやり取りする部分
・お題
「あなたは家電メーカーの設計者です.
 新しいTVを開発することになりました.TVをデザインしてください」
→4K,サラウンド,ネット動画などの機能の搭載を検討するのではないだろうか
・デザイナーの考えるデザインとユーザの欲しいデザインは異なることが多くある
・システム状態が視覚的にわかること(ユーザビリティ10原則)や,
ゲシュタルト心理学,類洞の要因が満たされていないものがある
・ユーザのことを考えていても,製品中心のモノづくり,
思い込みでのモノづくりをしてしまうことがある

<UI向上のための技術>
・人間工学
見やすい文字や色(赤は誘目性が高いなど)のような人間に関することは
人間工学基づいて計算されている
例)注目してほしい情報を赤色で記述する
・認知科学
脳が認知しやすいものを取り入れる
ゲシュタルト心理学 近接の要因
→余白を入れるなどして見やすさを取り入れる

<UX(ユーザエクスペリエンス)の必要性>
・価値の変化
時代により価値は変化している
→製品に内包される価値から顧客が意味を付す価値へ
重要視される価値の変化
基本機能・性能重視(UI)

ユーザビリティ(UI)

ブランド・見た目(UX)

どんな体験が得られるか,企業や製品に共感できるか(UX)
・UXとは
ユーザ特性,利用状況により決まる
利用前,利用中(UI),利用後,利用時間全体すべてに気を配る必要がある
→利用中のみに焦点を当てるのはだめ
UX:ユーザが製品,サービスを通じて得られる体験の総体
・UIとUX
設計品質(UI):ユーザビリティや新規性,機能性,性能,魅力など
利用品質(UX):有効さ,効率,達成感,安心感など
UIをデザインすることだけでは、UXを向上させることはできない
・どのように実現していくか
ウォーターフォールやアジャイル(いつユーザが触れるか,部門の分け方の違い)

<UXを向上する人間中心設計>
・人間中心設計とは
企画・設計・評価すべての段階で常にユーザを考えながらデザインする方法
ユーザの要求事項を先に考える必要がある
→設計から先に行ってはいけない
→AI使いたいから使おうというような発想は不適切
アジャイル型で人間中心設計のプロセスを繰り返す
企画担当者だけでなく,プログラマ,評価担当者もユーザのことを考える必要がある
誰がいつどこでどのように使うかを考える
・ユーザの要求事項から設計までの間
→ペルソナ/シナリオ/カスタマージャーニーマップなど
ユーザへの聞き取りは深堀していくと潜在ニーズが見つかる
ガスコンロの例)火が付いたか確認するためにしゃがむ
→普段していて慣れてしまっているのでユーザは不便だと気付かないこともある
・ペルソナ
アラン・クーパーが提唱
ターゲットユーザーを細部まで考えること
例)
・ターゲットユーザー
 20代OL→妹なのか姉なのか彼女なのかわからない
  →ばらつきが生まれてニーズに合ったものが作れない
 ↓ペルソナ
 普段の服装や性格,好きなブランド,休みの日に何をしているか,など
 詳細にイメージする
 
・ペルソナの効果
ユーザになりきってアイディアを出すことで,利用者に対する理解が進み,
創造的なデザインが作りやすく,評価もしやすくなる
・カスタマージャーニーマップ(利用状況)
その商品とターゲットユーザが触れ合ったときの状況を想像する
→網羅的に考えることができるのでUXを向上することができる
・シナリオ(AsIs→ToBe)
ターゲットユーザのストーリーを考える
→見つけたマイナス点をシナリオベース(物語調)で改善していく
  プラスの点をよりプラスにしていく
・サービスブループリント
UXの難しいところ自分の部門だけでは向上させることは難しい
→日本では部門の壁を壊すことがさらに困難であるといえる
・プロトタイピング
紙芝居や小さいものを作って実際に触ってみる(アジャイル)
→プログラムや外部仕様書を書く前にやってみる
・アクティングアウト
・ユーザビリティ評価
ユーザを呼んで実際に触ってもらう
・効果
UXを向上させる(心地よさ,業務効率)ことでユーザーの満足度が向上、結果として売り上げや販売量増
開発コストを低減させることができる
ディーター・ラムス
「デザインとは、橋の形を考えることでなく、向こう岸への渡り方を考えることだ」

<人間中心設計推進機構の紹介>
・イベント紹介

<質疑応答>
Q. 人間中心設計推進機構は関東と関西でどんなイベントを開催しているのか
A. 関東ではWEB系が多く、組込系は関西のほうが盛んである。
 関西は製造業が多いので、今回紹介したようなプロセスが必要とされることが多い
Q.機能拡張を考えるときに前の製品のしがらみがあるため開発しにくい
A.しがらみをなくすのは難しい
しかし、ペルソナがあれば、ペルソナにとって重要でかどうかで議論できるようになる。
Q.何らかの課題に対する解決策は出すことができるが,
ユーザも具体的に理解できていない課題に対してはどうするのがよいか
A.ユーザー調査や観察などを実施して、常にユーザのことを考え続けるしかない
課題を見つけることにパワーをかけるべきである