ソフトウェア設計・同演習で大失敗!!
長年実践的なオブジェクト指向開発の教育に取り組んできた研究成果を結集してソフトウェア設計・同演習を新しい方法で運営するチャレンジに取り組みました。どのようなチャレンジかというと,完全習得学習(mastery learning)を目指し,個別化教授システム(PSI: personalized system of instruction)を全面的に導入するというチャレンジです。kintone ベースの個別学習管理システムを株式会社 AISICと共同開発して臨みました。
ところが,やってみてわかったのですがこのチャレンジは大失敗でした。学生が個別に学習を進めるペースが予想以上に速く,70名近くもいるので圧倒的な量の答案が集まり,TA学生5名による個別学習管理システムでの入力・フィードバック作業がまったく追いつかなかったのです。
この失敗を振り返るにあたって,向後千春先生のウェブ教材の授業設計と比較したところ,大きな違いがあることがわかりました。
- ソフトウェア設計・同演習では,全ての演習課題の答案にフィードバックをしようとしていました。答案を個別学習管理システムに入力してチェックリストによるフィードバックを学生に返却するという流れです。
- 一方,向後先生のウェブ教材「ネコのぶきっちょと学ぶC言語」では,一つの単元に存在するたくさんの演習課題は自己チェックするだけで,各単元の通過テストのみプロクターが確認するという方式でした。
そもそもフィードバックの対象となる答案の数が最小限に抑えられているのですね。
そういうわけで,次週はこの辺りの授業設計を見直して再チャレンジします!
コメントが寄せられています。
2015年4月17日追記
大失敗したものの,個別化教授システム(PSI)の大いなる潜在的可能性を痛感する授業でした。実感としては,今までの授業のやり方の倍以上の学習スピードで進められそうな手応えでした。つまり,今まで15コマかけて教えてきた内容を7〜8コマ程度で終えることができるということです。もっと高度な内容を盛り込んでも消化できるかもしれないのです。これは画期的です!
追記その2
向後千春先生より,個別化教授システム(PSI)をうまくやるためのポイントを紹介いただきました。
PSI=個別化教授システム インストラクショナルデザインの原型 https://kogolab.wordpress.com/教える技術/インストラクショナルデザイン/psi/
ご紹介にあった2つのポイント「独習を可能にする」「完全習得を保証する」は,向後先生のウェブ教材を分析して特に意識して取り組んできたところです。今回起こった問題は,むしろこれらがうまくいって学生の学習効率が飛躍的に向上しすぎた結果,フィードバックがボトルネックになってしまった事案だと認識しています。向後先生のおっしゃる2つのポイントは,個別化教授システム(PSI)の強力さの原動力だと私も強く実感します。
追記その3
米島 博司さんより,次のような助言とコメントをいただきました。
フィードバック=判定、診断、矯正はそれぞれに、自己評価、相互評価、特定指導者評価の選択肢がありますね。経済的にも最適なほを選べば大丈夫ですね。素晴らしい取り組みですね! (中略) 個別に果敢に挑戦とは素晴らしいです!是非発展的継続を!
個別化教授システム(PSI)の良さを失わないようにするために,チェックシートによる自己評価と,通過テストによる特定指導者評価を採用しようと思います。また相互評価はレビュー演習として,モデリングの個別学習が一通り終わった後で行おうと思っていました。
P.S. 反転授業の研究のスレッドにもありますが,最初私が勘違いしていました。大変失礼しました。改めてお詫び申し上げます。