反転授業の「学力格差」を解決する2つのアプローチ
反転授業は,ある意味,学習意欲のある学生とない学生の格差を拡大する教え方です。(それを批判する記事もあります。カリフォルニアの高校で、一部「反転授業」が導入された背景 生徒間の学力格差をワープスピードで拡大する、残酷なツール : Market Hack )
今回はこの問題を解決する2つのアプローチを紹介しましょう。
反転授業の「学力格差」を補うには学びあいのグループワークを
一つ目の解決方法として,反転授業に学生同士が互いに学びあうようなグループワークを入れると補完できます。一例として,それまでの学習で生じた技能の格差を埋めるような学びあいのグループワークを行った事例を紹介します(ただしこの事例は2014年時点では反転授業にはなっていません)。この事例「ソフトウェア設計論」という授業では,コンピュータシステムがどのように機能してほしいかを書いた箇条書きの記述を元に設計図を書く技能を習得することを学習目標としています。当然のことながら,技能の習得度合いには個人差がとても大きいです。
そこで,学生同士でグループを作らせて,互いの設計図の答案を交換し,設計図の不備を指摘しあうようなグループワークを課しました。同じ箇条書きの記述を与えられても,勘のいい学生は多くのことに気づくものです。グループワークによってそれを目の当たりにすると,勘の悪い学生でも「なるほど,そんなことも考慮しないといけないのか」と気づくことができます。
反転授業では,動画等で予習するという側面ばかりが注目されますが,それを全員に行き渡らせるためには,「晴れの舞台」である授業の場が鍵となります。予習すればするほど授業で生き生きと活躍できる,そんな動機付けが与えられれば,予習してくるようになります。私が紹介した事例では,他の人の設計図の問題点を指摘すること,それを通して学び合いをすること,そういう要素が動機付けにもなっているというわけです。
コメント1
はい,その逆効果があることを実感することが多々あります。再履修者をクラスに含めてしまうと,ワークショップはやりにくいですね。
完全習得めざして底上げを図れ!
もう一つの考え方は,学習意欲や技能の「格差」が問題ではなく,学習意欲や技能が「低い」学生が存在することが問題だと,問題を捉えなおすことです。この考え方に基づくと,学力の底上げ,すなわち完全習得(mastery)を目指せば良いということになります(完全習得学習については完全習得学習と形成的テストを参照ください。反転授業においても完全習得型反転授業 あるいは Flipped-Mastery model として論じられています。)
この考え方に基づくと,予習時に小テストも合わせて行い,その成績によって授業を組み立てるやり方が考えられます。たとえば小テストが不合格だった学生には個別指導を通して理解につまづいている箇所を特定し再学習させ,小テストが合格だったら高度な課題を与えて深化学習をさせる,という感じです。
このときに小テストを効率良く採点することが重要になります。私の授業では今のところ主に人手でこの採点作業を行っています。もちろん,できれば小テストをeラーニングにして自動化したいところです。現在,徐々に移行しようとしているところです。
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なんとか大人数授業でも導入したいところなのですが,一足飛びにはうまくいきません。チャレンジ中です。
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ゲーミフィケーションは,ある意味完全習得を目指す方向性の中の1つのアプローチに位置付けられるのでしょうね。
この記事は反転授業の研究での議論を元に書き下ろしました。