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「学びの竜巻」をもたらす5つの教授方略〜通常の授業スタイルの場合

「学びの竜巻」とは,ラーニング・パターンで提唱されている理想的な学習スタイルの1つです。

ラーニング・パターン No.10 「学びの竜巻」 http://learningpatterns.sfc.keio.ac.jp/No10.html

学びの竜巻 Tornado of Learning

与えられた水を、単にスポンジに吸い込むような学びから、 自らの興味・関心の「竜巻」に絡め取っていくような学びへ。

どうでしょう? このような「学びの竜巻」が形成されると,極めて高い学習効果が期待できそうですね。

「学びの竜巻」を生徒や学生に実感してもらうのが,21世紀型の教師の職務だと思うのです。

極めて高い学習効果が期待できる「学びの竜巻」を学生たちにもたらすには,教師はどのようにしたらいいのでしょうか? 今回はこの授業設計を考えてみたいと思います。

ラーニング・パターンからの考察

ラーニング・パターン No.10 「学びの竜巻」の記述から授業設計を考察してみましょう。

受け身で情報を吸収するだけでは、効果的な学びにはつながらない。

自らの興味・関心の「竜巻」に絡め取るように、情報をつかみ、自分がもつ知識と混ぜ合わせ、関係づける。

すなわち,「学びの竜巻」を起こすためには,アクティブ・ラーニングを教授方略の主軸として位置づける必要があります。

何かに取り組んでいるときに必要に迫られて学んだ知識は、しっかりと身につくことが多い。それは、やりたいことを実現するために必要な情報を自らつかみにいくからであり、それを使うために他の知識と関係づけるためである。

このことから言えるのは,アクティブ・ラーニングの中でも,プロジェクト学習(Project-Based Learning)問題発見解決型学習(Problem-Based Learning) が適合しそうだということです。そしてどちらの教授方略を採用した場合でも,「学びの竜巻」をもたらすには,得られた経験学習をふりかえって知識体系と関連づけることが肝要だと言えます。よくあるPBLでは,この辺りが甘かったりすることが多く,思ったような効果を上げられません。この観点からは,「学びの竜巻」を起こすには,プロジェクトや問題発見解決のサイクルを数回繰り返すことも大事だと言えます。

さて,「学びの竜巻」をもたらすことは,PBL(すなわちプロジェクト学習や問題発見解決型学習)ではない通常の授業スタイルでできないのでしょうか? 私は授業設計次第で,通常の授業スタイルでも「学びの竜巻」をもたらすことは十分可能だと考えます。その授業設計については後ほど考察します。

ラーニング・パターン No.10 「学びの竜巻」の記述に戻ります。

アウトプットから始まる学び(No.7)は、まさにその効果を活用する学びの方法である。

したがって得られた知識と経験を他者に伝えることを授業に盛り込むと効果が期待できます。

また、創造への情熱(No.22)がもてるテーマを選ぶというのも、学びの竜巻を発生させるうえで重要となる。

このことからは授業の最初での動機付け,とくに知的好奇心の喚起が重要だと言えます。

教えてくれることを自らつかみ取っていくことは、教わり上手になる(No.13)ためのコツでもある。

したがってアクティブ・ラーニングのアクティビティ,たとえば調べ学習が効果的なのでしょう。 そして教わってから学ぶ順番ではなく,学んでから教わる順番にすることで教わる際の吸収力を高めることもポイントです。

「学びの竜巻」をもたらす5つの教授方略〜通常の授業スタイルの場合

では,通常の授業スタイルで「学びの竜巻」をもたらす授業設計を考えてみましょう。ポイントは次の3点です。

  1. 最初に学習内容の概要と応用を話す。
  2. これから学ぶことを踏まえて発問させる。
  3. 講義に入る前に,キーワードを予習させる。
  4. 講義ではキーワード同士の関連を強調する。
  5. 学んだことを小テストやレポートで記述させる。

1. 最初に学習内容の概要と応用を話す。

これはARCSモデルのR:関連性を喚起する定石です。すなわち,学習者の身近なことや将来につながることに関連するようなことは学習意欲が湧きやすいので,身近な関心事や将来の夢につながりやすい応用分野の話をすると授業の魅力が増すということです。応用について話すことは,学生が自らの興味関心の「竜巻」に絡められる効果も期待できます。学生に情熱を抱かせることができたら大成功です。

2. これから学ぶことを踏まえて発問させる。

これから学ぶことについて知りたいことや素朴な疑問などをノートに書き記してもらいます。発問することで学生が自ら情報をつかみにいく姿勢に移行できます。 また,アウトプットから始まる学びの効果もあります。 もし可能なら,さらに教師が学生からの問いを把握して回答する時間を講義後に設けると満足度が高まるので,より効果的です。

3. 講義に入る前に,キーワードを予習させる。

講義で使われている言葉がわからないと,講義を聴く気が失せてしまいます。 そこで,あらかじめキーワードを予習させることで,この事態を防ぎます。さらに「学んでから教わる」順番にすることで,学生自らつかみとる姿勢を強化します。

4. 講義ではキーワード同士の関連を強調する。

「学びの竜巻」をもたらすには,学習内容と自らの知識や経験とを関係づけることが鍵になります。したがって,キーワード同士の関連を強調し,詳細については思い切って講義時間外に自習させます。講義時間外に自習させることで,アクティブ・ラーニングの要素が強まり,より「学びの竜巻」をもたらしやすくなります。

5. 学んだことを小テストやレポートで記述させる。

学習の仕上げとしてアウトプットさせることは,学んだことを自らが持つ知識体系の中に組み込みやすくする効果があります。 そこで,発表を取り入れたり,学び合いの時間を設けたりすることが効果的です。

まとめ

「学びの竜巻」が形成されると高い学習効果が期待できます。普段の授業の中でも「学びの竜巻」をもたらしやすくするような授業づくりは十分可能です。授業の中で,この記事で紹介した5つの教授方略(教え方)をぜひ試してください。

Q&A

Q1

Facebook: 学習意欲に火をつけるコンテンツ紹介

ちょっとひっかかったのが、3番と4番。 そもそも学習意欲が低い生徒が講義前にキーワードを予習してくるのかということと、キーワードと自分の既存知識の関係を講義時間外に自ら進んで学習してくるか(予復習)という部分です。

講義時間外の学習はおそらくしない という前提に立った場合(学びが促進される前段階)にはどうすればいいでしょうか?

高校生の6割~7割が初期の状態はそんな感じだと思います。

はい,仰る通り,そもそも学習意欲が低い学生にはこのアプローチは効かないと思います。そういう学生がマジョリティだという場合には,それ以前にやるべきことがあろうかと思います。ARCS モデルで学習意欲のどの部分に問題があるのかを分析するところから始めるのでしょうね。学習意欲がそもそも低い場合にどうすべきかについては,そのうちブログに書こうと思います。

参考記事: 学習意欲に火をつけよう!〜ARCSモデル

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