ZACKY's Laboratory 山崎 進 研究室 Page Topへ

A-STEPトライアウト完了報告

2020-2021年度の研究開発期間で採択を受けたA-STEPトライアウトを完了させ,JSTに最終報告書を提出しました。

研究開発題目

SAR衛星観測データ解析・伝送・共有による費用対効果の高い土砂災害検出システムの実現可能性検証

研究開発期間

2020年11月2日~2022年1月31日(計画変更に伴い延長)

研究開発機関

  • 公立大学法人北九州市立大学
  • 株式会社minsora

申請時の課題概要

災害大国日本は自然災害に備えるニーズが極めて高い.一方,日本の民間企業が打ち上げるSAR衛星群により 世界中の任意の地点を10分以内に撮影できる可能性が生まれたが,現在地上局における膨大な衛星画像データの 処理能力が不足する.この技術的課題に対し,我々が研究開発した並列処理性能に優れた研究シーズであるPelemay により,衛星画像データの処理能力を向上でき,その結果,例えば衛星画像を用いて土砂災害を早期検出する 費用対効果に優れるシステムが実用化できる可能性がある.本研究開発では,Pelemayの機能拡張を図り, SAR衛星画像を用いた土砂災害検出プロトタイプの実用性を検証することを目的とする.

研究開発の総括

当初計画していた土砂災害検出アプリケーションと,それに必要なSAR衛星観測データ解析・伝送・共有と, 画像の分散並列処理のプロトタイプをそれぞれ実装でき,費用対効果が高く実現できることを立証できた. かつ新たに明らかになった技術的課題の解決の目処が立った. 衛星データを使って社会実装を目指している新たな事業化パートナーと, 後継プロジェクトの研究開発予算を獲得できたことにより, 事業化の可能性が大いに高まった. 新たに明らかになったニーズや技術的課題により,本研究開発が実現したときの経済的・社会的価値創出と 地域社会の持続的な発展への貢献の期待が高まった.

関連プレゼンテーション

ElixirConf 2020 - Susumu Yamazaki - Pelemay: Real-time, High-Resolution Satellite Image Processing

Nerves on Cloud

原理

画像差分による土砂災害検出

  1. 集中豪雨前のSAR衛星画像を撮影する
  2. 集中豪雨中もしくは集中豪雨後のSAR衛星画像を撮影する
  3. 画像の差分をとり土砂災害を検出する

原理は単純だが,問題はそれを求められる時間内に終えることが可能なのか?である.

システム構成

NVIDIA Jetson AGX Xavierのような,消費電力あたりの画像処理性能が高いコンピュータユニットを多数束ねたコンピュータクラスタを構成し, 衛星画像の分散並列処理を行う.

  • 効率の良い分散並列処理を実現するために,並列プログラミング言語Elixir(エリクサー)と技術シーズであるPelemay(ペレメイ)を応用する.
  • 画像処理にはElixirとOpenCV(オープン・シーヴィ)をつなぐevision(イー・ヴィジョン)とNx(エヌエックス)を使用する.

得られた差分画像の例

土砂災害発生前の静岡県熱海市伊豆山近辺(2020年10月撮影) 土砂災害発生前の静岡県熱海市伊豆山近辺(2020年10月撮影)

土砂災害発生後の静岡県熱海市伊豆山近辺(2021年7月撮影) 土砂災害発生後の静岡県熱海市伊豆山近辺(2021年7月撮影)

本研究開発により得られた差分画像 本研究開発により得られた差分画像

主要な研究開発成果物

  • Elixirで高速に並列処理する仕組みであるPelemayFp(ペレメイ・エフピー)
  • PythonとElixirで記述した土砂災害検出アプリケーションのプロトタイプ
  • Elixirで画像処理する仕組み(evision+Nx) (海外の技術者と連携して構築)
  • Elixirで記述した画像を複数コンピュータユニットで分散並列処理する仕組み
  • Elixirで記述した画像処理する際に生じるメモリ不足による異常終了を抑止する仕組み

学会発表

  • 山崎 進, Nerves on Cloud, 第7回WSA研究会, 2020/11/13
  • 山崎 進, Thousand Brains: 人工衛星画像利活用とその高速化を含むテーマの1000以上の協調的・競争的な基礎・応用研究プロジェクトの構想と計画, 第10回小型衛星の科学教育利用を考える会, 2021/2/28
  • Susumu Yamazaki, PelemayFp: An efficient parallelization library for Elixir based on skeletons for data parallelism, 情報処理学会第133回プログラミング研究発表会, 2021/3/17
  • Susumu Yamazaki, Expected Application of BeamAsm, Erlang 2021, 2021/8/26
  • Susumu Yamazaki, Future Possibilities and Effectiveness of JIT from Elixir Code of Image Processing and Machine Learning into Native Code with SIMD Instructions, 情報処理学会第136回プログラミング研究発表会, 2021/11/2 (許可の上,同内容を第63回プログラミング・シンポジウムでも発表,2022/1/8)

メディア発表

  • テレビ大分(TOS) 情報生ワイド番組「ゆ~わくワイド」, 2021/11/05

後継プロジェクト

<< ザキ研のクラブ活動(2022年度版) 環境情報学概論2022〜コンピュータと地球温暖化は決して無縁ではない>>