適切な権限と裁量と試行錯誤の機会を与えると人は自然と責任感を持ち大きく成長する
2007年に北九州市立大学に着任してから現在まで振り返って,一番の転機になったのは,2011年に同僚の先生が突然退職したことがきっかけだったと思う。
それまでは,その同僚の先生がソフトウェア関連の教育と研究を統括しており,私はその指示に従って動く「作業者」に過ぎなかった。2011年にその同僚の先生が突然退職し,ソフトウェア関連の全てが急に私が引き受けることになった。
当時,本当に苦しかったのは確かだ。とてつもない試練だった。しかし幸運なことに,そのときから私には適切な権限と裁量が与えられた。権限や裁量を求めて自分から動くこともした。そして責任を果たそうと一所懸命に取り組んだ。周囲の助けもあった。倉貫さんという師にも巡り会えた。気がつくと私は大きく成長して重大な責任を果たせた。
その強烈な体験を踏まえて,研究室の学生にも適切な権限と裁量を与えるように心がけた。そうすると学生たちは創意工夫を凝らして期待以上の成果をもたらしてくれた。これは1回や2回のまぐれではない。研究室の文化として根付いてくれた。
もちろん最初のうちは失敗することもある。しかしここは肝心なところだ。こういう場合は失敗を許容して試行錯誤させる。フィードバックも効果的だ。そうすると学生たちはすぐに学習してよりよい成果を出し始める。
適切な権限と裁量と試行錯誤の機会を与えること,それが一番人を成長させる。自然と責任感も芽生える。
ちなみにそのことを最初に示してくれたのは,九州大学の福田晃先生である。私は福田先生のもとで研究員をしていたが,福田先生はいつも私たち研究員に大きな裁量をくれた。そして失敗したときにはいつでも責任を取ってくれた。改めて福田先生に感謝します。