「慎重さ」を生かすプログラマ志望学生の学習アプローチ
慎重なことは弱みだと思っていませんか? しばしば臆病になったり消極的になったりして,弱点のように捉えている人も多いのではないかと思います。
しかし,下記の本で紹介されているストレングスファインダーで「慎重さ」が強みだと診断されるくらいだったら話は別かもしれません。今回は,主にプログラマ志望の学生を想定して,慎重さを強みに変える学習アプローチを紹介したいと思います。
※この記事を読んだ人は,ストレングスファインダーはもう受けましたね? まだの人はぜひ買い求めて診断しましょう。ストレングスファインダーは1冊につき1回しか診断できないので,新品の本を選ぶのが無難ですよ〜
「慎重さ」の発達段階
個人的な見解ですが,「慎重さ」には少なくとも2つの発達段階があるように思います。
ごく初期の段階は「なんでも怖がる段階」です。ありとあらゆる取り組みが危ないように見えてしまう状態です。この状態だと他人のチャレンジに対しても否定的になってしまいがちなので,周りからも疎まれたりします。
しかし,プログラマの場合,きちんと原理から理解し,多くの事例を把握することで,次の段階に進化します。それが「見切った段階」です。すなわち,多くの知識と経験に裏付けられて,何が危なくて何がそうでもないのかの分別がつくようになるのです。「見切った段階」まで発達すると,「慎重さ」は大きな強みになります。
「慎重さ」に向いた技術領域
では「慎重さ」を強みに持ったプログラマ志望の学生は,どんな技術領域を勉強しておくといいでしょうか。ポイントはきちんと原理から理解し,多くの事例を把握することだと思います。このことから私が連想する技術領域は次の通りです。
- コンピュータの動作原理
- システムプログラミング(プログラミング言語処理系,OS,ミドルウェアなど)
- 安全性
- セキュリティ
- 倫理
では順番に紹介していきましょう。
コンピュータの動作原理
何が危なくて何がそうでもないのかを見切るには,きちんと原理やしくみを理解することがまず基本です。原理がわかっていれば,どう振る舞うのかがイメージできるので,見切りやすくなります。
プログラマの場合では,もろもろの原理やしくみの一番根底にあるのは,コンピュータそのものの動作原理です。したがって,まずコンピュータの動作をイメージできるようになりましょう。
手前味噌ですが,私が担当する「コンピュータシステム」という授業ではコンピュータの動作原理を直観的に学べるようにしています。コンピュータシステムのコンセプトについては次の記事を参照ください。
システムプログラミング
コンピュータの動作原理をつかめたら,どうプログラミングして活用するかを習得していくといいでしょう。それにはシステムプログラミング,たとえばプログラミング言語処理系やOS,ミドルウェアなどの原理やしくみを階層的に理解していきます。
またも手前味噌ですが,私が担当する「コンピュータシステム」という授業ではシステムプログラミングの技術領域の概要をつかむことができます。
安全性
もし車やロボット,ドローンなど,MAKERS,ものづくり系に関心があるならば,安全性について一通り勉強したほうが良いです。「慎重さ」を強みに持つプログラマならば,安全性についての基本的な考え方とたくさんの事例を知っておくと,安全か危険か見切りやすくなり,強みを活かせます。
安全性について学ぶ時の定番の本はセーフウェアです。
セキュリティ
もしウェブアプリケーションに関心があるならば,セキュリティの基礎知識は必須です。「慎重さ」を強みに持つプログラマならば,セキュリティについての基本的な考え方とたくさんの事例を知っておくと,脆弱かどうかを見切りやすくなり,強みを活かせます。
セキュリティについては次の本がオススメです。
倫理
コンピュータが広く社会で使われる世の中では,技術者の基礎教養として倫理を身につけておくことが大事です。「慎重さ」を強みに持つプログラマならば,倫理についての基本的な考え方とたくさんの事例を知っておくと,何をすると社会から非難されるのかを把握できます。強みを生かすのに役立つことでしょう。
倫理についてのオススメは,今度工学倫理が専門で同僚の辻井洋行先生に聞いておきます。工学倫理の授業では次の書籍が教科書に指定されていました。
おわりに
思い立ってざざっと書いてみましたが,いかがだったでしょう? シリーズ化していこうと思うので,よかったら感想ください。また,ざざっと書いたので,いろいろ不十分だったことがわかりました。どしどし追記していきたいと思います。
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