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ザキ研の研究室運営の今 2021年版

今から丸6年前の2015年の今日に「ソフトウェア開発の教育のビジョンを語ろう」を熱く語っていました。

当時は情報工学におけるInstructional Designを確立すべく,日々研鑽していました。このブログにも毎日のように記事を書いていました。「ソフトウェア開発の教育のビジョンを語ろう」は,その研究の集大成と言えるものでした。博士論文として執筆はしていないものの,この研究成果には国際会議3報の研究成果を含んでおり,博士論文並みに労力をかけたものでした。

2017年に研究テーマをプログラミング言語処理系のコード最適化にチェンジして,2021年の現在は研究室運営も新しいスタイルに落ち着きつつあります。2015年当時の研究室運営スタイルは「山崎進研究室のひみつ〜個性に合わせた長所を伸ばす研究指導」にまとめ上げています。あれからザキ研の研究室運営はどのように変わったのでしょうか?あるいは何が変わらないのでしょうか?

変わらなかったこと「大前提〜学生の可能性を信じる」

今でも私はピグマリオン効果 「教師が可能性があると信じた学生の成績は伸びる」 を信じています。

変わらなかったこと「教育のゴール〜自ら学ぶ力を習得させる」

学生はいずれ独り立ちしなくてはならないと考えていることも変わりません。したがって,自ら学ぶ力を習得させるという方向性にも変わりはありません。

ただし,少し変わったことがあります。2015年当時は 学生と目標を合意し,その目標に至るまでのアプローチを学生に考えさせる ことを重視していました。しかし,2021年の現在は,普遍性のある「型」を教え,その「型」に沿って研究を進めさせることと, アプローチの方向性を指導教員が示し,それに沿って学生に具体的な進め方を考えさせる ことを心がけています。

その理由は,本学大学院博士前期課程の修士論文に求められる水準が引き上げられたことで,学生自らの発想で研究のアプローチを考えさせるのでは,その水準に到達できないためです。

本学大学院の修士論文に求められる水準に足りる,新規性のある研究に取り組むためには,研究の「型」をしっかり身につけることが重要です。そこでザキ研では,研究の「型」を指導し,「型」を身につけるまでは,研究アプローチの方向性を指導教員が示し,それに沿って学生に具体的な進め方を考えさせる方針を採りました。

解釈を変えたこと「学生は教師の道具ではない」

今でも「学生は教師の道具ではない」と考えていますが,解釈を変えました。

2015年当時だと,指導教員である私の研究テーマの一部を学生にさせることは,学生を労働力として使うように考えていて,あまり好ましくないと考えていました。学生は学生の研究したいことがあり,それを実現に近づけることを卒業研究の中核に据えるべきだと捉えていました。

しかし,前述の修士論文に求められる水準の向上により,そのようなやり方では水準に到達できないというジレンマに陥りました。

苦慮した末,見出したのは次のような考え方です。

まず学生本人がどういう方向性の研究や能力開発をしたいのかを見出すことが重要である,それは変えませんでした。変えたのはその後です。卒業研究では,指導教員の持つ数々の研究のサブテーマの中から,最もその方向性に近いものを選んで与えることにしました。学生がその提案に同意すれば,その研究に着手します。同意しなければ,別のサブテーマを考えます。

この方向転換に際しては, 舘 伸幸先生の助言がとても参考になりました。この場で改めて御礼申し上げます。

新たにこだわったこと「新規性と意義と実現可能性を全て満たす研究テーマを指導教員が探す」

指導教員が取り組んでいる研究テーマは,新規性と意義を備えていますが,卒業研究を行う学生にとって実現可能性に乏しい研究テーマです。

そこで,新規性と意義と実現可能性を全て満たす研究テーマを,学生本人が見出した方向性と,指導教員である私自身の研究テーマ・得意領域の両方を満たす領域の中から,全力で探し出すということにこだわるようになりました。

このアプローチで捨てていること

2015年当時の研究室運営に比べて,学生1人あたりの指導教員の負担がとても大きくなります。学生同士の助け合いにも期待できなくなります。したがって,一度にたくさんの学生を育てることは難しくなります。

また,このアプローチは卒業研究には良いと考えているものの,本当にこのアプローチの延長線上で,博士前期課程・後期課程の学生を育てられるようになるのかは未知数です。そのためには学生が自立していくために,「組んだ足場を徐々に外す」ことが肝要になります。

おわりに

今回は2021年時点で取り組んでいる新しい研究室運営についてお話ししました。このアプローチは,学生が主体性を保ちつつ,研究として高度な水準に達することができるように考えました。

今後,このアプローチで大学院生を育てられるようになるのかが試金石になってきます。

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